東京で記者をやりながら政治活動に携わっている男。大規模な官憲の弾圧を受け、絢子と共に、知人の伝手を頼って淵輪まで逃げのびてきた。
病を患っており、環境のよい場所で静養をするために、淵輪へ移り住んできた女。儚く青白い容姿は、村の伝承「青祠女」を彷彿とさせる。
新興の養菅家。ライバルの山岡への腹いせとして、「乞われ御」の儀式を持ち出して、節子を生贄にしようと画策する。
上沢の畑に惹かれて山二つ向こうの村から嫁いできた女房。喋り出したら止まらない下世話さと、底知れない物欲を持つ。
茂の実妹。役所勤めの佐倉元に嫁いだが、夫は家を留守にしがちである。過去に2人の夫が謎の失踪をとげた。
村で採れた匂粗を工場へ仲介する商人。合理的な思考を持つ反面、村に伝わる伝承などに深い興味を持っている。
淵輪の新しい組頭として、厄介者の茂を追い出そうと「波羅夷」という手段を提案する。短気で喧嘩早いが、根は小心者である。
良家の生まれで、祖母の手によって大切に育てられた箱入り娘。祖母が語り聞かせてくれた数々の伝承を規範として生活している。
山岡家の一人娘。甘やかされて育った為、気に入らない事があると逆上しやすい。両家の父親の意向により、清二に嫁ぐ事になっている。
幼い頃に両親を亡くし、先代に育てられて以来恩義を感じ、人生を山岡家の為に捧げて奉公している。見た目とは裏腹に相撲が強い。
村一番の大棚水口家の跡取り。面倒な事にはなるべく近寄らない事なかれ主義。節子という許嫁がいながら、美代に好意を持っている。
年若い事から青年衆の中でも下っ端のような扱いで、小間使いに使われる事の多い男。直情的で誰よりも精神的な幼さをもっている。
雑貨屋を営む娘。たった一人の家族であり、東京へ出て行った兄の帰りを、毎日集落の入口の一本杉の下で待つ。
20年前に生贄となったが、奇跡的に生き伸びた男。その後、村人からは死んだことにされている為、「見えない」ように振る舞われている。