【1】
ヤス「…どちら様でしょう」
里見「水口清蔵さんはいらっしゃいますか」
ヤス「清蔵さん…ですか?…お待ちください」
【2】
清二「水口です。生前、父から話はそれとなく聞いておりました」
勝「清二。そちらは」
清二「東京からこの淵輪に引っ越してくる里見ご夫婦です」
【3】
里見「誰だ、お前!お前だよ、お前!」
昭三「…私ですか?池端昭三っていいます。野本にある村役場で戸籍係をしています」
里見「アンタじゃない」
昭三「…では、誰が見えるんですか」
【4】
黒川「アンタには、俺が見えるのか」
里見「…見える。…誰だお前」
黒川「さしずめ。幽霊だな」
【5】
美代「そういえば。皆さんも気づきました?私だけかな」
登美「聞きましょう」
美代「ちょっと見えちゃったんです。奥さんの手のひら、赤かったんですよ」
【6】
登美「こういう話があるわ。ある村に、誰も見た事ない女がいたんですって。その姿は透き通るほどに白く美しい、だけど。夜な夜な出歩き、男たちの生き血を吸って歩いたらしいの。その口の周りは常に真っ赤な鮮血に濡れていて、見咎めた人間を、恐ろしい形相で睨むらしいわ」
【7】
勝「清二、清蔵さんの後釜を決めなきゃならない。組頭だが、お前、後継いでやるか」
清二「俺みたいな若造に無理ですって。できれば勝さん、引き受けてくれませんか」
【8】
茂「絶対、アイツの仕業なんだ」
義一「20年前にもこういう事があったでしょう」
茂「あった。だからよ。今のコレも、それにかこつけた勝の仕業に違いないんだ」
【9】
里見「あの…水口さん。…幽霊を、見た事ありますか?あの家には。幽霊がいますよ」
清二「は」
里見「幽霊がいるんですよ」
茂「この人は何を言ってるんだ」
【10】
美代「…これ何ですか?…え、人?誰ですか……死んでる?」
絢子「見たな?」