【61】
中田「火事の混乱の中で逃げ惑って、誰かに突き飛ばされて、吐いたって事ですか。やっぱりあれだ。火事の被害者の感覚だ」
蜂屋「逃げ遅れて、可哀想に火に包まれてしまったんですね」
【62】
由比「有罪の評決は覆らないんですか」
樋口「被告人の人間性を尊重し、情状酌量を求める形が一番現実的でよろしいかと」
由比「……仕方ありませんね」
【63】
蜂屋「私も、さっきから何か変だなーと思ってたんです。それが目的なら何で自分の家の前に火をつけたんだろうって。相手の店に直接放火すればいいのに」
由比「変だと思ってたら、何で言わないんです」
【64】
三好「いいですか、人間性だとか動機だとか、そんなものはどうだっていいんです。その状況下で誰が無しえたか、いや、誰しか無しえなかったか。それに当てはまる人間がすなわち犯人であって、吟味の結果、被告人その人だったという事ですね」
【65】
蜂屋「例えば、大きな自然災害が起こると私は何らかの方法で知っていたとする。でも皆は信じてくれない。そこで私は、自分と自分の家族だけを避難させた。そしたら私は罪に問われるのでしょうか」
【66】
樋口「無罪の方」
稲沢「…確かに、成しえたというなら、別に誰だってそのチャンスがあったんじゃないでしょうかね」
樋口「同数という事ですな」
【67】
安藤「あの、陪審長」
樋口「何ですか」
安藤「電話してもいいですか?」
樋口「え?何なんですその質問!今、ダメって言ってたの聞こえませんでしたかね!」
【68】
滋野「おいおい、誤解するなよ。うちの店じゃないよ。隣駅の店の商品の話だよ。あそこの店のをよ、書き換えちまうんだよ」
中田「余計にひどいだろ!それって犯罪じゃ」
【69】
蜂屋「清吉さんは、荷物を運ぶようにと、誰から言われたんでしょう」
中田「もちろん、旦那さんの指示です。外から帰ってくるなり、すぐ蔵の中のものを運び出すように指示されました」
【70】
三好「まあそう慌てず。じっくり考えましょう」
倉澤「どうしてそんなに余裕なの。…アンタ、何かとんでもなく重要なものを見たのね?何をみたの」
多賀「それは今別にいいじゃないですか」